書き置き/たもつ
 


声帯が未遂に終わった
夏の初めの頃
植物は止まり
蟻の巣は時間をかけて
退廃していった
立てかけられた
日傘、と
ひとつまみの酸素
光化学スモッグの半日は
残務整理に費やされた
川の清い流れが時々あり
訪問医のポケットから
漏斗が溢れては消える
そんなことの繰り返し
点呼の済んだ風の切れ端が
段落の隙間を埋めていく、と
それはおそらく
行方を晦ましたわたしたちの
書き置きだろう


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