実験/愛心
私の背中には翼が生えている
それは私以外は誰にも見えない 見せない 気づかせない
隠したそれは 白い羽根を震わせ
朝露に濡れた木々の隙間を縫って 花びらの表面を撫でて
寝ぼけ眼を擦る世界を 鮮やかに滑空する
風は友達 雲を身体に纏わせて
地上の喧騒は遥か遠く
夜空に輝く星の歌を聴きながら 月はスポットライトにもよく似て
目覚めた私の気怠さに 溜息ひとつ
羽根の抜けた翼では飛べない
自由という甘露を求めて 何者にもなれないまま
たとえ地上に降り立っても 私の背中には翼が生えている
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