火群/りつ
 
風はゆふぐれの懐かしさを湛えていた
《ア》と《オ》の螺旋が交差し争って
辺りは静に満ちていた

みみのあな

鼓膜を突き刺すくらいキンと痛い

酔いどれ月が
小石となって
ばらばら礫
捨てられた盃を割る

“月が死んじゃったよ”
“お葬式しなきゃね”

陽気な声のアルルカンたち
彩も錦な鮮やかに薫る夜を纏い
『祝祭』と【初夜祭】の始まりを告げ
貴腐酒を飲み干した


月の死を哀しんだのは海だけ
海はそっと月の礫を集め
凪いだ波で出来たRoadにちりばめ
海星の《ア》と《オ》の乳を流し
唄った

  (Perthro !)

静寂の中に有った


そして
礫は青く青く燃え始め
漁火となった

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