青虫/栗栖真理亜
 
白菜の葉についた青虫をそっと手袋をした手のひらに乗せた
ごつい布越しからもわかる赤ちゃん特有のプニプニした触感

そっと地面に下ろしたとたん
待ち構えたように隣の年老いた男性が足で何度も踏みつけた

「かわいそうに」
思わず漏らした私の言葉に
ヤツらは田畑を荒らす害虫だと息巻いて余計に踏みつけにする男性

ああ、その青虫だって農薬たっぷりの野菜は食べないだろうに
どんな生き物にも害を及ばさない自然に栽培されたものだからこそ
安心して食べられる

生き物は知っている
目の前で蒼青と息づく野菜がとてつもなく美味であること
共に生きる私たちもその命を頂いていることを

男性が踏みつけた跡には畑の土が泥のように目繰り上げられて
青虫の姿は隠されてしまった
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