ガマのなか/栗栖真理亜
友人はイラつきを押さえつけられず叫んだ
「違うってば!
その女性の後ろのガマのなかにだってば!」
「絶対、幽霊だって!」
他の子達が口を揃えて言う
しかしいくら目を凝らしても私には見えない
それになんだか友人の言動自体
写真の人物や実際起こった悲惨な状況について
冒涜しているような気がした
「気のせいじゃないの?
私にはそんなもん見えないんだけど」
その瞬間スッと塩が引くみたいに
友人達と私の間に冷気が流れた
私は机の上に置きっぱなしになった教科書を見返し
暗闇で恨めしそうに見つめる女の顔をみつけた
戻る 編 削 Point(0)