冬夜 歩み うた(六十・六十一)/木立 悟
階段に
月の花びらが落ちている
けだもののまばたきの前を過ぎ
けだものの舌に拾われる
何も無いところに花びらを見るものなど
邪険に扱ってもいいのだ
邪見に扱うことで
得られるものもあるだろうから
夜は縮まり
右のふくらはぎを流れ落ちる
さらさらと
さらに小さく
紅い夜は
雪の夜
ひとつの窓の
曇の夜
花の本を持つ子と
葉の本を持つ子
羽の本を持つ子
金の径の本を持つ子
鉛の朝陽
鉛の影
けだものの足跡
鉛の雪
舞い降りる鳥を数えつづけて
まだ数え終えない
青空が冷える方へ
夜は
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