供花/飯沼ふるい
似た
ことばの陰影なのかもしれない
人でいることに
窮屈さを感じたことばたちが
押し潰された声帯を通して
吐瀉物のように漏れ出ている
そう思うと
善きものへの志向とか
人並みに生きるということとか
なにか道徳的なことが浮かんでは沈む
僕の頭ン中でもことばが衣擦れを起こしているらしい
けれど14mgのタールの中には道徳的なものなど
これっぽちも含まれていない
そして次第に雨が降る
無限の、その一歩手前ほどの意味を孕む雨
それは台所のシンクに詰まっていた汚水だ
死んだ魚の腐肉を浚った水だ
どこかで三年前に生まれた赤子を洗った産湯だ
生きる、ということにおいて
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