霊の汀/ひだかたけし
 
くすりと笑う君の
世界はとっくに
喪失されていたんだね、
気付かずにいた僕を置いて
くすりくっすり ひっそりと
剥き出し硝子窓を震わせ続け
余りに露骨なままそのままに
外界に曝され野晒しの
君というもう最早
蒼白になっていた内界

ひゃっとしながら
その瞬間、また瞬間、
君と僕と
窓際に寄り添いながら
互い異なる血を寄せ合い

喪失された世界を前にして
喪失される君を予感して

 未だ内から沸き出る熱を浴び
  外界の享受を一時遮断して
   内なる純粋な宇宙の想い
    意識の舞台に生かすならば
     自らが自らを創り出すこと
    創り出す自らが流れ出すこと
   ただそれだけは解っていたから
 この僕はかろうじて生き残り

心の奥底のこの魂の慚愧の念、
消えることの決して無く

 何故あの折に伝えられなかったのか

この夜明け前の白い足首 

余りに鮮やか震え迫り来る 、

呪いの視界に促され
自らに果てなく問い続け

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