乾いたオアシス/リリー
「この靴みて!」
靴底の端が切れてパカッと割れた状態になっている
スニーカーを私へ差し出して
「朝は、こんなんになってなかったわ」
悪戯だと思い込み反応をさぐる様な彼女の目付き
勤務先の建屋で更衣室も兼ねた詰所の利用者は三人
「だれがそんなモノ触るんですか?」
靴底のゴムなんて湿度や乾燥で自然に割れること
ありますよ
軽く突き放す口調で説明すると
彼女からは何の返答も無く
午後の休憩時、私と同じ部署に配属されている
もう一人の詰所の利用者である先輩と二人きりのタイミングで
この話を持ちかけた
「きのう、また始まったんですよ!」
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