儒教どうでしょう/室町 礼
 
たかとわたしは思って
います。飼い牛の肉をおいしくするために苦いビールを
与えるようなことを敢えて言いますが、ジュネの文学の
養分は彼が根を伸ばしている大地=生の営みの複雑で混
沌たる世界にある。知的特権エリート層が養分としてい
る書物の本棚ではなかった。ジュネの文学は見かけはと
もかく観念の合成や増幅によって生まれる類の文学では
なく現実世界の矛盾から生まれた桎梏の歯車にギチギチ
としめつけられてそこから吹き出す生理的な体液のよう
なものとしての文学だった。だからジュネがもし刑務所
に収監され、その地獄の鍋の底のような世界で煮えたぎ
られたあげく生まれた文学がどれほどのもの
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