いきる/竹節一二三
 
土の匂いに目を覚まし
光の朝に種をまく
爪の先に腐った葉が入り込み
くちゅりと匂う
一緒に植わっていようかな
れんが塀に背を預け
足を埋めて空を仰いだ

となりにはトマト
誰かの植えたアイビー
レタスはない
ひまわりの種
ポピーは季節外れ
カンナの葉を水滴が走り
よろめいて浜木綿に散る

足裏に
やわらかな気配
手の上に
おけら
目を閉じて
いのちの気配を
ひそかに息づく
土のいのちを

道に飛び出たみみずを
畑に帰し
干からびたトカゲのしっぽを
ありの巣に運ぶ
蛇と目が合えば
挨拶をしよう
ひらめく蝶に
蜜を分けてもらおう

緑の葉を掻き分けて
あおい風が吹き抜ける
いつの間にかかいた汗は
黒いつちにしみこみ
みえなくなる

朝と昼のあいだの
静かなひととき
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