眠るのは、なぜ?/みぎめ ひだりめ
わたしが眠るのは 夜を越えるため
青い目をした狼が 林の奥で睨んでる
黒ざめた毛皮は 荒々しくなびき
木の根のように 重苦しくたたずむ
生きていれば 喰われるので
わたしは目を瞑る
死んでますよ わたし
死んでますから
だから 殺さないで
狼は部屋のなかに ふっと現れ
わたしの首筋に 鼻を近づけた
血の香り してます
生きてるものを襲って 喰った香りが
生きてないです
生きてないです ほんとに
ずっと ずっと 生きてないです
これ以上ないほど 死んでます
狼は目を瞑り 動かないわたしを
つまらなそうに見つめてる
もはや当たり前のように
わたしは 死んでいます
生まれてから 死ぬほどの時間
狼はわたしを見て そうして
興味がなくなったのか
ようやく夜闇に ふっと溶けた
呼吸がもれ 血管がゆるみます
首筋が 寒くてしかたなくて
世界まるごと 震えてます
わたしは死んでいました
まさしく 正当に死んでいました
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