朔  /神奈備亭
 
月のない夜に
小さな罪を 沢山着飾って
玉虫色の日傘を くるくる回して
ビルの屋上から 君は
ふわりふわり と降りてくるのだ

お嬢さん、御機いかが?
と、声をかければ 嬉しそうな顔で
硝子の靴の 片方を差し出して
また 風に流されて
ひらりひらり と摩天楼に帰っていく

然しながら、猫であるわたしは
硝子の靴を そのままに
欠伸をひとつすれば 長靴を履いて
ウサギを狩りに行くのです

また月が現れる頃
沢山の硝子の 破片の上を跳ね回り
傷だらけになった足を
罪深い舌で 癒すのです





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