詩で人生を語らず/洗貝新
午前四時のまだ薄暗い横断歩道で手をふった。
いつもすれ違う同じ配達仲間のお兄さんがバイクでやって来たからだ。
お兄さんとは言っても一廻りくらい年下のおじさんだ。
信号で、鉢合わせに止まったので
大きく手をふって挨拶したよ
すると、〜頑張ってね〜
珍しく大きな声を掛けてくれた。
電動自転車で配達する辛さをわかってくれているのだ。
思わず胸が熱くなり涙が出そうになるけれど、
これくらいでは泣かないよ。
昔たいして好きでもない娘と付き合っていて
電話口で泣いたことがあった。
職場でかなり辛い出来事があった。
でも明らかに彼女にたいしてオーバーに演技していたはず
その
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)