原子論/fujisaki
 
案外ロマンチストだねって。言葉濁して、人はみんな詩人だって父が言っていたのを思い出して。その時は酔っていたけど、ひどくかっこよかった。世界のさけめ、われめ。雲も空も同じような色だからそれは余計にうねって、ちょっと雷を連想する。いや、やっぱ龍。光る龍。飛んでいた。われめが終わるあたり、には彩雲。虹を少しあいまいにしたような。興奮気味に発見した父は隣で運転している。無臭だ。家族がつまって、会話があわさって車は楽しい。母はいつもたわいもないことを言うから。僕は父にも母にも似ているなって思う。

シャワーを浴びたら、焼けた髪のにおい。タイルを一つずつふみしめる。記憶の中の彼女は離れていって僕は5月の空
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