あの夜の何処かで/ホロウ・シカエルボク
嫌だった、あまり酒に強くは無いから、余程運が良かった夜のことなのだろう、お巡りも今ほど煩い時代じゃなかった、そもそもそんなところをずっと歩いているのに誰に通報されることも無かった、どうしてなのかはもう誰にもわからない、歩き続けている間何か、ややこしいことを考えていた、あまり大っぴらに話したいような内容ではなかった、二十代の頃に考えてることなんてだいたいそんなものだ、夏の夜だったけれどよく冷えていた、一時間程度で酔いが冷めたことをよく覚えている、終点に着いたのはそれからすぐのことだった、線路の終わり、それは何故かその時の俺を酷く苛立たせた、俺は唾を吐いてすぐ近くの港に向かった、今はもうその港は客船を
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