あの夜の何処かで/ホロウ・シカエルボク
荒れた路面に転がったサイダーの空瓶、ほんの少し欠けた飲み口に残された血が、自分のものだと錯覚した理由は、きっと…潰れたペットショップの前で辛気臭い夜が更けていくのを見ていた、コーネル・ウールリッチの小説の始まりの様な夜だった、そして困ったことにまだ俺は誰も殺してはいなかった、物語は始まらない、どれだけ待っても…パンを膨らませる部屋みたいな湿気が辺りに充満していた、今にも雨が降り出しそうなのに空はずっと耐え続けていた、何をそんなに意地になっているんだろう、と問いただそうかと考えたけれど、それは結果的に俺に返って来るだろうと思って、辞めにした、何かが…タイトルだけが思い出せない曲の様に頭の中で何かが蠢
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