惹句で満たして 1章/浅い殴打
 

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女の頸筋をつき破って
白い鰻の顔が渦を巻く。
その波が押し寄せるままに
わたしを そろ、り──

睨みつけている。

目薬を値踏みする瞳に
ライターの足踏みが
ぼおっと映った。
それは恐らく、

心の身動ぎに 似ている。

「最近めが
しばしばで……」

黒い髪がしっとり揺れる彼女は
わたしの中の 焦燥、おそれ
香り立つ嫉妬。
僅かに落ちる好奇心までも 
見透かして
指を伸ばす、微笑う。

彼女の手筋が
ざらりと触れたのは
たった二ヶ月前の事だった。

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…………………
「そ、ですかしばしば…」

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