氷河の朝/ホロウ・シカエルボク
けれどそもそも俺は夜だけしっかり食べる人間だから、それほどの苦労はしなくていいだろう、冷蔵庫を開けてみると取りあえず山ほどもある卵を片付けるべきだという結論に達した、久しぶりにターンオーバーにしたい、と身体は告げていたが、ここは繊細な日本人らしく蒸し焼きにするべきだと押し切った、二人から一人になったと一番実感する瞬間というのがこういう時だ、油が熱を帯びてのべつ幕無しに喋り始めたり、卵を落としたときにシムシティの住人たちのように聞こえてくる歓声、そういう音が信じられないくらい大きく響く、俺はどこに居るのだろうと思う。長年住み慣れた部屋の中で、まるで壁材が変わってしまったのではないかというほどに音は弾
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