チキンカレー/栗栖真理亜
 
喫茶フィガロで食べたチキンカレー
オレンジ色の洪水が
厚めに切った玉葱とチキンとともに口の中でぶつかり合う
喉の奥で絡まる暑さと辛さ
まるで口腔全体が待ち受けたように全ての旨みを受け止める

皿の上はあっという間に空になり
それでも少しこびりついたルーをスプーンで掬い取り舐めればまた
ほんわかとやわらかい気持ちになった

カレーには少し苦目のブラックがよく似合う
火のように暑くなった口の中に
珈琲という名の黒い誘惑を流し込んだ
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