亀/栗栖真理亜
ぼんやりと雨で白灰色にくすんだ空を見上げ
彼はただ自分の不遇を嘆いていた
心地よい雨音
窓に映る何も変わることのない陰鬱な樹影
まるで干からびて細い指を広げて絡め取ってしまいそうな
自分のうちから湧き起こる世間への違和感は言葉によって程よく包まれ
無慈悲で理不尽な行いには無視をしたまま
除外され悪様に腰を蹴飛ばされても
声を上げることもなく咎め立てもしない
大人しく従順な奴隷
主人からつけられた鈴は彼の首周りでくすんだ音を鳴らす
彼はいつまでも自らの内側から空を見上げていた
手脚を丸め甲羅の中に閉じこもる亀
その身に与えられた苦味のきつい薬を顔を顰めながら鼻をつまんで飲む
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