むち/栗栖真理亜
ある少女が広場で粗末な麻の衣服すら全て脱がされ
諸肌出した状態で鞭打ちの刑に処されていた
どこかで小耳に挟んだメロディに
彼女なりの詞を乗せて口ずさんでいたのが災いとなった
彼女の歌声を聞きつけた意地悪な町人が
禁じられた曲を少女が勝手に歌ってまわっていると言い触らし
哀れ少女はあっという間に無慈悲な輩に取り押さえられて
酷い仕打ちを受ける羽目となった
彼女の肌は赤くみみず腫れになり目は潤み唇には血が滲み
痛々しいほどの姿だったが
助けようなどと思う者は誰一人おらず
むしろ我も我もと加勢する者すら現れて
さらに彼女の体には鞭が霰のようにふってくる始末
もはやボロ雑巾かと紛うほどズタボロとなった彼女の上から注がれる好奇の目
眼、眼
漂白されたような不気味な顔が幾重にも連なり
彼女に向けて薄ら笑いを浮かべている
何者にも見放された彼女の行く末や如何に
まるで見せ物のように祭り上げていった者たちの無知が少女の体を蝕んでいった
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