ケムリクサ/大町綾音
 
「遠くはなれた……」

遠くはなれた遠い町を
あなたは毎日、
自動車で走っていた……。

そうして思い出を
思い出したら、
懐かしいレモンの香り……。


「しごとにおわれる」

しごとにおわれる
ろぼっとみたいな
えーあいみたいな
あなた えーあいあい
むりしないでね?
ほんと
ねむってね?
もうくたくただよ

だだちゃまめたべよう

きょうも あーつかれた
わたしもあなたも おやすみよ



「なつかしいノートブック」

なつかしいノートブックに、
思い出がいっぱい。

わたしの伊勢物語、
わたしの土佐日記、
わたしの紫式部、
わたしの清少納言。

そこにあったのはわたしの話と、
わたしのではない言葉。
ため息をついて、
わたしはミミズのような文字を見つめる。

きっと、
こんな朝、
わたしはコーヒーを、
のみながら、
それらの「文字」は煙になって……。
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