つれづれと俳句(無季)/大町綾音
日のもとに目覚めていよと主(ちち)の言う
手のひらに馴染むラジオの重さかな
喪が明けて元気を失くし父の指
腕ほどに細くなりたる父の足
墓畔には柔らかな風なつの風
あの人もまだまだ遠くで生きていて
波がたち木々がさわぎピアノの忌
クッキーとビスケットです今日の昼
生きること再び思え夜半(よわ)の明け
病でも鬱でもなくて悲しいの
海を渡り闇の下までくるおしく
それはもう生きましたという謎だから
たち切りたい想いを告げたら午後の文(ふみ)
とつぜんの雨なら昨夜(きのう)も降ったけど
レモン一つ頭に乗せてお道化てる
約束は貴方と明日(あす)の電車のなか
さよならとおはようとがこんなにも似てる
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