いえのにおいがする/
そらの珊瑚
ひさしぶりにかえってきた娘が
玄関を開けて
いえのにおいがする、といった
ずっとこの家にいるわたしには
そのにおいがわからない
いいにおいかどうか
よくないにおいかどうかも
わたしが息をする
家が息をする
いつからか
わたしはもうこの家に取り込まれ
わたしのいちぶがこの家になってしまった
帰り際に
なつかしいにおいだった、と
言葉を残して娘は
ちょうちょになってとびたっていった
このにおいをたどって
またかえっておいで
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