生まれたての幽霊/みぎめ ひだりめ
 
がたんと ごとんと
夜を行く 列車の鼓動にゆられ
わたしは天井を見た

誰もなにも言わずに 座っている
眠ってしまったような
ジジジッ 電灯
ああ お前もそろそろか
もうすぐ わたしも帰って眠るぞ

瞼を閉じれば よみがえる
下手をうったな ばかばかしい
ジジジッ 明滅
ほころぶように ひかるなお前は
今日の小さな失敗を
笑ってやって くれるのか

がたんと ごとんと
夜を行く 列車の鼓動にゆられ
じわりと夜は更けていく
わたしは街の明かりを見た

そうだな
駅に着いたら 煙草を買おう
身に帯びた 重たいなにもかも
けれど 捨て去ってしまわぬよう
熱い煙を吐いて 気を済ますのだ

しのつく夜の空に 浴びせた
白い吐息は きっと そうきっと
ぼあぼあと 生まれたての幽霊になる
そうしてわたしは 帰って眠るのだ

ジジジッ
がたんと ごとんと しても
誰もなにも言わない
ただただ列車は 夜を行く
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