五月/夏井椋也
 
なにやら
胸の奥が粟立って
仕方がないから
五月を
描こうと思った

ところが
緑の絵具を切らしていて
仕方がないから
青と黄の
絵具を混ぜてみたが

五月にはほど遠い

まるで
あなたとわたしの沈黙を
どんなに混ぜても
恋に
ならないのに似ている



そうだ

あなたを呼び出してみよう

その素っ気ない素振り
そのきっぱりした笑顔
その嘘を塗らない唇
その心地好い言葉の乾き方

なにより
あなたが五月だった



戻る   Point(17)