ねむり/秋葉竹
ひとりの
子猫がずぶ濡れに
なっていたので
その夜
おもわずうちにつれてかえった
責任を果たす自信もなく
面倒をみる気もちもあまりないのに
なんだか小雨の夜に紛れてしまって
その子猫を抱きしめたくなって
おもわずうちにつれてかえった
こころが
病んでいたのかのかと問われれば
それはたしかにそうだろうが
こころが病んでないときなんて
過去の明るい想い出のなかにしかないから
そんなことが
いちいち理由になるとも想えない
ほんとうの純粋無垢なよろこびは
想い出のなかにしか
存在しないもの
すべてが
この小雨がやまずに
すべてが
永遠にふりつづく雨のせいで
すべてが
水没するのなら
その子猫を
抱きしめつづけてねむるように
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