落涙/ただのみきや
曇天のいろむらに
絵筆をあらう少年の
かなしい青を見た
あなたの
深い行間の谷の底
眼裏に熱いわななきを拾う
ゴミ箱の中身を外に捨て
空になったそれで世界をすくいとる
だがわたしの気圏にあるものは
月の石とかガラクタとか
会話もできない幽霊ばかり
時に炙られ
さらさらと囁くように
もれ出した
静寂
光を湛えたまま返さない
青磁の骨壺
菩薩めいた沈黙
大人になるということは
生を雑事で覆うこと
息継ぎをするために
息をとめて動きまわる
快楽をなぞればなぞるほど
鮮度はうすれ
記憶の輝きが増すばかり
老いがすすむと
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)