ゴッホが描いた競艇場/室町 礼
 
とにか
くレースを観てみたが、バイクに夢中にな
っているわたしにはあまり面白く思えなかっ
た。体重の乗せ方で艇を回転させる技術は似
ていたがバイク操作より遥かに単純のように
みえた。あたり屋の予想通り買ってみた舟券
も当たらなかった。それでもホールの雑踏と
爆発的な活力のざわめきはいつまでもいても
飽きが来ることがなかった。
奥の売店がやや静かなので回転テーブルに腰
を下ろして「肉玉」というやつを皿にもって
もらって食った。つくねの串のようなやつで
皿から立ち上る湯気はしばらく収まる様子も
なかった。

二度目に住之江競艇場へ行ったのは次の年の
12月だった。わたし
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