ゴッホが描いた競艇場/室町 礼
予想屋だった。
手のひらに予想を書いて握り、だれかに当た
って「手が開いた、予想見たんやから予想代
払え」という、まず滅多におめにかからない
絶滅系のゆすりたかりの予想屋だった。
わたしのような初心者を狙ってくるらしいの
だが、その当時は警備とか警察を呼ぼうにも
そういう雰囲気ではなく、仕方なく
「なんぼやねん」と尋ねると
「安いで、三百円や」という。
予想料は一律、一レース一予想につき百円と
決まっているらしい。何百何千という客を持
っていれば百円でもかなりの稼ぎになるのか
どうか。ゆすり屋であっても仲間内のこのル
ールは守らなければならないのかもしれない。
半分し
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