古い古い一冊の雑誌のような人にわたしはなりたい/ただのみきや
ぬ恋の無理心中
それとも仇か通り魔か
逃げ水の流れ着く
涙の湖から
垂直にそそり立つガラスの声があった
魚たちは鳴き叫び
精液ですべてを白く濁らせた
虚空に掛けられた悲しみの額へ
聴診器を当てるひとびとよ
わたしたちのことばが止血されることはない
名前の書かれていない名札の群れが
残された胎児をとり囲む
わたしもむずかる赤子のよう
快楽になめされることを夢見ながら
息をするのを忘れている
(2025年4月20日)
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