鈍い夜の後の幻想/ホロウ・シカエルボク
 
しよう…そう自分を納得させるのも何度目かわからない、空家を放ったらかしておくのが損をするという制度になって、街は更地だらけになってしまった、未舗装の駐車場ばかりが増えていく、道は新しく増えることはないのに車はどんどん新しいモデルが作られて売れ続ける、通勤ラッシュ、帰宅ラッシュ…煩わしい時間が増えることが目に見えているのにどうしてそんなものに乗りたがるやつが後を絶たないのかわからない、とうに死んでしまった神に向かって祈りを捧げ続けるようなものじゃないか、帰り道の路地で野良猫と睨めっこをする、あいつは俺の皮膚や筋肉を通り越して、その中にあるものを見定めようと目論んでいるように見えた、あの猫のような目を誰かが俺に向けてくれるなら、俺はもしかしたらこんな風に言葉を並べることをしなくて済むのかもしれない、でも、そんな安息はどうしても上手く想像出来なかった。


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