メモ/はるな
 
りも頭ひとつぶん小さくて、そのせいで様々な(勝手な)庇護を受けていたこと。

覚えていないこともある。
なぜいつも姉がわたしを殴ったのかということ。髪を引き、腕をひっかいて、「調子に乗るな」と言うのかということ。いつ文字を読めるようになったのか、そして文字のなかで眠るようになったのかということ。

はっきりと覚えていることがある。
ピアノ教室が引っ越して、はじめて新しい教室へ行くことになった日、姉が「手をつないでもいいよ」と言ったこと。たしか8歳だった。15分の道のりをずっと手をつないでいった。そして無事に辿り着いて、お教室が見えた瞬間に、その瞬間に姉が、手をふりほどいたこと。


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