獄門の紅い糸/栗栖真理亜
 

フフフ、可笑しいわね
こんなに空がどんより憂鬱な灰色で覆っていても
私はちっとも苦にならない
むしろ晴ればれとした気持ちにすらなるの

一粒の雨が私の頬を撫でながら流れ堕ちてゆくけど
それはもう貴方の顔すら見なくても良くなった事に対する
安堵と喜びでしかない

あぁ、貴方という不埒な男を想い続けた私を
獄門の鬼が卑劣な音で鞭打つの
ピシャリピシャリと長くて黒い舌が私の体を舐め回しては苛んでゆく
奇怪にねじ曲がった時計の針が
長く切ない時の流れを延々と指し示す

あれほど乞い焦れた白い光忽を貴方は知らないけど
貴方との柵を突き崩す鍵を私が手に入れたならば
貴方はきっとガンジガラメに縛り付けられた絆から解き放たれるだろう

そう、いつかきっと私が貴方を
茶色く変質した紅い糸を断ち切ってあげよう
いつかきっと・・・・
戻る   Point(2)