ツグミに想う/ただのみきや
 
帰り支度がすんだなら
明日にでも行くがいい
旅する天使はおしゃべりで
その上酒癖もわるいときてる
翼ある者は去るがいい
おまえたちの羽根のほとんどは空気
膨らんだ胸の中身さえ
絡みついた糸のような
そのさえずりの動線も
風にほどかれ透けていく

一年もあけずに帰って来るだろう
だけどそれは別のおまえたち
同じ川に二度足を踏み入れる者はいない
そんなことを言ったのは誰だったか
すべてはくりかえし
同じではない

積み重ねた齢の上に
黄砂のように降り積もる
沈黙のまま木乃伊(みいら)化した感情の塵芥
ことばの薄い布では包み切れない
歴史とか 民族とか
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