表現/栗栖真理亜
表現することに貪欲な幼女はいつしか誰にもわからない
自分だけの表現を見つけるようになった
こころの底や隅っこに引っかかった蟠りを吐き出そうと
黄色いクレヨンで半月の顔した人物を描くも誰の目にも留まらず
幼女は少女となり日記帳に自分なりの詩を書いた
それはただ文章を書くだけではつまらないと少女のエゴにも似た欲求
たんぽぽの綿毛に託したその詩は母親の目にようやく留まり
素直で何も捻くれたことのない詩の証だとして書き続けることを勧められた
あれから四十年近くの月日が流れ
すっかり純情さを無くした私は
まったく純情さのカケラもない詩を書いて暮らしている
ただ黙々と自分の表現と向き合って創り続ける
世の中の不条理や理不尽さをどのように描き伝えてゆくか
私の課題はまだまだ途上にある
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