ある寒い春の日/ホロウ・シカエルボク
つ息をついて、突然で申し訳ないけれどもう出て行くわ、と言って、すでにまとめてあった荷物を持ってそれ以上何を言うことも無く静かに出て行った、僕はあまりに突然過ぎて何を言うことも出来ず、事の顛末をただただ眺めていた、そして時間が経つにつれてあまりにもあっさりとそれを受け入れてしまった、怒りも悲しみも苦しみもなかった、僕はどこか壊れているのかもしれない、その時初めてそう思った、でもすぐに忘れてしまった、その故障を直したところで、もう何の役に立つこともないのだ―不意にドアベルが鳴った、その鳴らし方には懐かしい癖があった、でもそれをどこで聞いたのか思い出すことが出来なかった、でもドアを開けなければいけない気
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