悪夢は私を感光しない/由比良 倖
 
ばかり、
見ても見ても、何も見えないのです。

冷たい空の下で鳴る孤独な電線を見上げると、
身体が渦巻く、宇宙は何処までも続く、
回線も人間の時も過ぎ、
私の今を釘付けにする、死ねるかな、と少し
期待できると、安心します、私が
普通だといいな、ただの普通であるなら。

(でも先生は死んだら火葬がいいとか考えますか)
(火葬はお寺でしょう、私は教会なの)
(土葬?)
(昇天するのよ、私は)



部屋の中では、物たちが流れていて、
みんな名前が付く前に形を失う、
私は世界の光のプラグを探している、
とても疲れてしまったのは、世界の方、なので
私には行き場が
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