抜けの良さをぬけぬけと語る「抜け」と「ピアノリサイタル」/鏡文志
ではありません。
(当日)
綺麗とは、威風堂々とドレスを着て座るその姿です。
壊れることを恐れる老婆心では、ありません。
綺麗とは、大胆と過激併せ持ち、見栄とハッタリを貫く、その切れ味です。
錆びたナイフが売り物にする、優しさではありません。
綺麗とは、神経質なピアノの調整のような、デリケートな素肌です。
調整の壊れたお喋りでは、ありません。
綺麗とは、外側にすべてを預け、信頼と安心に身を任せようとする、その心です。
不信と回避から、内側に籠る怯えではありません。
綺麗とは、白鍵と黒鍵が織りなす、良心の呵責と悶え、その中を駆け抜ける疾走。光と闇が織りなすハーモニー。そしてそれを現すメロディの中に、あります。
雑踏の中に紛れる自らの足音を色で誤魔化し、すべてを灰色で済ます適当には、ありません。
綺麗とは、やり切った後の余韻です。なにもする前の空白では、ありません。
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