暗闇の底から/栗栖真理亜
 
発散することすら出来ない
俺はうずくまる
うずくまり俺の心の一番深いところと会話する
そこはどこまでも深い闇で不思議と安らぎを与えてくれる
俺は胎児のように身体を丸めしばらく何も言わず漂う

ふと誰かを呼ぶ声が聞こえた
俺は顔を上げる
それは単なる空耳
俺は落胆と共に再びうつむく
眼を閉じる

何をそんなにガッカリする必要があるだろう?
俺はただこうして漂っていればいいだけ
怖いことなど何もない
そう自分に言い聞かす瞳に涙がこぼれる

それは冷たく透明な涙
身体の熱を拭い去ってくれるような涙
俺は涙を指ですくうと紫色に変色した唇に乗せた
一気に吸い込む
涙の粒は喉元を通り暗い身体のなかへと吸い込まれていく

ああ、少し軽くなった
これでいい
これでいいのだ
俺は独り言のように呟く
再び誰かを呼ぶような声
俺はそれに答えることなく
さらに深い闇へと堕ちていった
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