眠りの前/由比良 倖
 

いつかの会話の片鱗が、記憶のどこかを優しく刺して、
刺して、傷だらけのリアルを反芻する私は、
悔いの冷たさを感じて、
ひっそり死への願望を抱いている。

どこかで話は成立していて、けれど、
結局、私は去るし、あなたも去る。

私は冷たい窓辺で、風を感じて煙草を吸いながら、
あなたがどこで何を思うか、永遠に知らないのですが…
私にはもう、耕していく言葉がなくて、
風との会話でさえが、辛いものとなり始めています。
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