NWSF怪畸幻想譚 斬魔屋カンテラ!!『人質、或ひは齒母神』全/?任勇梓 Takatoh Yuji
 
は(これは單に彼が、自分を「不運」だと規定してゐた迄の事で、別段他人ヒトから見てだう、と云ふ人生上の欠落はなかつた)、テオ、あの天才猫を、たつた百萬圓と引き換へに、人(聞けば、あの【魔】退治のヒーロー、カンテラだと云ふではないか! 是緒にはそれすらも口惜しかつた。けつ、スタア街道まつしぐらつて奴か)に譲つてしまつたところに、始まつた。
 キリキリキリ。彼はカッターナイフの刃を舐めた。血の味がする。己れの舌を傷付けてゐる事に、気付いてか気付かずか、彼はその血の味に、密かに興奮した。
 テレビでは、「谷澤景六ことテオ氏、芥川賞レースに參入!」と、愚民どもが騒ぎ立てゝゐる。もうかうなれば、實力行使し
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