幻身についての序論/森 真察人
あなたの網膜に向かってなめらかに捩れる音楽を把えるために僕はあなたの眼を視ない
なんとなれば眼とは水を細分しあまりに暗く非在の青を結ぶ その二組の泡の両端をそれぞれに直線で結ぶことは眼の仕事ではない それは僕が顔面を確かめるための過剰につややかな鉄板によって為されるものだ まず僕の首から下の前半身についてのかの一連の過程としての曲面には単なるナルシシズムが張り付いていると言えよう 問題は僕の首から上をも含む後半身と精神そして情緒についてのそれだ 後半身は離散的に反転せしめられくだらない砂時計型の一平面を描く さらには分析・綜合という眼をも凌ぐ卑しさでもって表示され僕は後半身について生涯その虚像を
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