かきくけ、かきくけ。/田中宏輔
 
がこわいわ。
ヒヒと笑う
団地の子。
手術したい。
ヒヒと笑う
団地の子。
手術したい。
手術してあげたい。
いやんっ、ぼくって、ノイローゼかしら。
ぼくぼくぼく。
たくさんのぼく。
玄関を出ると
目の前の道を、きのうのぼくが
とぼとぼと歩いているのを見たが
それもまた、読むうちに忘れられていく言葉なのか。
百ひきの亀が、砂浜で日向ぼっこしてた。
おいらが、おおいと叫ぶと
百ひきの亀がいっせいに振り返った。
おいらは
百の亀の頭をつぎつぎと、つぎつぎと
ふんっ、ふんっ、ふんっと、踏んづけていった。

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