海の底にて/由比良 倖
 
された海じゃなくて、海そのものの声があるの、ただひとつの海……」そう真由は言った。

 静かで、遠く、絶望的な感情が、僕を満たしていった。真由とは自殺サイトで出会った。自殺の予定日は、もう少し先だ。真由には読む本があるし、僕には書きものがある。静けさが僕たちを満たしていく。僕たちは段々海のようになっていく。ある日、僕たちがついに海の底でふたり一緒にいられたとき、僕たちは一緒に死ぬだろう。そんなの、何でもないことみたいに。
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