メモ(蹴り上げる)/はるな
さい。と言う。そんなのないし、とちょっと思う。嘘をついたらいけない、という気持もある。でもわたしは口に出したくない。
そうこうして(色色な会話が挟まったあとで)、わたしは「今ここに戻ってくること」を教えられる。わたしは今ここに戻ってきたくもないのに?と思いながら、言われるままに、壁や、テーブルや、腿や、指を触る。今ここに戻ってきたくもない、自分が考えたり感じたりすることが何一つ本当じゃないように感じられるし、嘘をついたらいけないと思う自分が考えることが何一つ本当じゃないってことが悲しい。今ここに戻ってくるのは悲しいことです。と言えない。
光のことを考えるとき、わたしの体は裂ける。裂けた先でまたこまかく裂け、裂け、裂けて、立てない。私の中にそれがない。影のことを考える。そうすると、裂けたからだが少しずつくっついてくる気がするのだ。何度も裂けて、癖になってしまった。何度も何度も同じようにする。でも、まだ裂け足りないような感じもする。
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