NWSF傳畸ロマン カンテラ・サーガ、ピリオド3『泰西堂主人』?/?任勇梓 Takatoh Yuji
 
に取りし吾妹子あはれ」と云ふ著名な和歌の色紙を持つてゐるのを見て、むらむらとコレクト意慾が湧いた彼、何かと云ふと「タイセイドー」「モトヨシ」と繰り返した。

〈月よみの光さやけみほことりて男さびする丈夫マスラヲのとも 平賀元義〉

 この色紙を綺麗に額装して、「泰西堂」主人・東堂進吾トウダウ・シンゴは、オーギュスタンの(お忍びでの)來店を迎へたのだつた。それから約二年経つた。


【?】

「やあカンテラ、エツミ。會ひたかつたよ」オーギュスタンは相變はらずのもしやもしや頭で、?のトンビにステッキと洒落込んでゐた。握手には力が籠もつてゐて、カンテラは「あゝこれなら今回は揉め事な
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