翡翠/栗栖真理亜
 

バスのなかで人混みに紛れてそっと涙を流した

ところが今は喫茶店の大きなガラス窓から
滝のように流れ落ちる雨の情景を見ながら
それすら感じずまるで解放されたよう

そうこうするうちに先にホットコーヒーがやってきた
砂糖とフレッシュを入れ
かき混ぜてからひとくち啜ったのにも関わらず
口の中に濃い苦味が広がる

チーズハンバーグ定食もやってきた
ひとくち食べてはまるで霞がかかったかのようにうっとりと
とりとめのない夢幻の世界に誘われてゆく
明日は書き溜めた詩をまたどこかに投稿しようか
そんなことを考えながら

心穏やかに流れてゆく時間が忙しさとは無縁の
至福という翡翠の輝きを秘めているようだった
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