2020年の詩的覚書/おまる
が壮絶すぎて、うまく言葉にできなかったのだと思う。普通の人は、そうやって黙り込んでしまうのだろう。
もう一人触れずにはいられない重要人物が、泣く子も黙る谷川俊太郎である。
谷川俊太郎が好きな人には二種類いて、まずある程度詩をたしなむ人、そして、そのほかの詩がよく分からないという「詩盲」の人々である。
同世代の詩人と比べても、ほとんど手合い違いの、冠絶したテクニックと言語的感覚を持っているが、と同時に、その膨大な作品のどこにも歌われるべき「対象」を見出せない。ゆえに、この人と、荻原朔太郎や石原吉郎らとを同日に語ることはできない。
谷川は、熱狂的な「モノ」への偏愛を告白して
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